感染症と泌尿器疾患を考える会を聴きに大阪新阪急ホテルに行ってきました 患者さんが頻尿を訴えたら・・・―頻尿診療のツボをお示ししますー やまなかクリニック 院長 山中幹基先生 膀胱の働き 交感神経 畜尿 ― 副交感神経 排尿 △ 膀胱は尿をためる(畜尿)、尿を排泄する(排尿)という相反する働きをしており、自律神経により無意識のうちコントロールされる 交感神経 有位→畜尿が↑↑ 排尿遅延 尿勢低下 尿線途絶 残尿感 尿閉 副交感神経 有意→排尿(頻尿)↑↑ 頻尿 尿意切迫 尿失禁 膀胱痛 排尿にかかわる症状は、それをコントロールする自律神経のアンバランスだけでなく、物理的要因からも生じる 一般に男性は尿道は長く(15-20cm)前立腺が存在するので、尿が出にくく(排尿困難)なる傾向にある 女性は尿道は短い(4-5cm)ので、尿が出やすい(尿失禁)状況になりがちである 排尿障害(尿が出にくくなる) 畜尿障害(尿が漏れやすくなる) 機能的(神経的)要因 神経因性膀胱 過活動性膀胱(切迫性尿失禁) ( 脳血管障害、神経障害などによるが 自律膀胱(脊髄損傷などによる) 、原因不明も) 腹圧性尿失禁 物理的要因 前立腺肥大症(尿道狭窄) (主に女性にみられる) 過活動性膀胱 膀胱の不随意な収縮による尿意切迫感を伴う排尿障害 突然、我慢できないような尿意を感じる(尿意切迫感) dry OAB 急な尿意でトイレまでの間に合わず尿を漏らしてします web OAB 治療 1行動療法 ある程度尿意を我慢させ膀胱容量を増加させることを目標とした訓練法で、10-20分単位で 尿意を徐々に延長するように指導し、最終的には2-3時間以上の排尿間隔が得られるようにする 骨盤底筋訓練 骨盤底筋の意図的収縮により排尿筋の不随収縮(無抑制収縮)を抑制させることをめざす 2薬物療法 排尿を促す副交感神経の化学伝達物質がアセチルコリンである。このアセチルコリンが膀胱の筋肉に作 用して、収縮を促す。これが強く発現すると、頻尿や尿意切迫感(尿失禁)への出現につながる アセチルコリンの作用に対して抵抗をもつ薬が抗コリン薬と総称される 抗頻尿薬の歴史 1988年 ポラキス 口喝が強かった 1993年 バップフォー 膀胱選択性が強い・・ 2006年 ベシケア デトルシトール 2007年 ウリトス/ステーブラ 2011年 ベタニス 2013年 トビエース 2013年 ネオキシテープ 2018年11月 ベオーバ 抗コリン薬の使い分け? ベシケア 半減期が長い 少ない処方でも長く働かせたいときに有用 少用量(2.5mg)でも充分なことも 他の複数の内服がある。患者には好都合 デトルシトール 唾液中や中枢への影響少 口喝やふらつきがでやすい高齢者には、副作用の出現の懸念が少ない この後継品がトビエース ウリトス/ステーブラ 半減期が短い ピンポイントでの症状コントロールが可能。夜間や午前中だけの頻尿には好都 合。副作用の遷延化も防ぎやすい ネオキシテープ 唯一の貼付剤 経皮吸収のため、急激な血中濃度の増加は避けられる。口喝便秘の出やすい患者 に使用する価値あり。また経口困難やPolyphamacyがある高齢者にも有効 皮膚のかぶれ注意 交感神経高め→畜尿増加させる β3アドレナリン受容体作動薬 β3受容体は膀胱において有意に発現していることが判明した→β3受容体を選択に刺激すれば、OABに有効 ベタニスの登場 ノルアドレナリン→β3受容体 →アデニル酸シクラーゼ活性化→cAMP産生→細胞内Ca2+減少→膀胱平滑筋弛緩 膀胱容量の増大 2019年12月1日から長期処方に 頻尿診療におけるプライマリーケアについて 排尿の回数が多い≒×頻尿? 頻尿は排尿困難が多く、1回あたりの排尿量が少ない状態をさす 1回あたりの排尿量が普通が多い状態で、かつ排尿回数が多い状態は多尿と言い、頻尿とは区別する まずは検尿からはじめましょう 検尿は患者さんへの侵襲がほとんどなく、豊富な診療情報が得られる検査 排尿回数が多い患者さんの検尿 尿中白血球陽性→尿路感染症 尿潜血陽性 →尿路結石、尿路腫瘍 尿比重が低い(1.010未満)→多尿 尿糖(+)なら糖尿病 尿蛋白(+)なら内科的腎疾患 場合によっては電解質異常、尿崩症 問題なければ水分とれとれ症候群 血液ドロドロをふせぐために・・ *水分を多くとると、脳梗塞や心筋梗塞を予防できるか? 病的な脱水におちいっていると脳梗塞や心筋梗塞が生じる危険性がたかなくなるなるものの、脱水状態にない 人が普段から水分を意識的に摂取しても梗塞性疾患は予防できない 健常人に1日2L以上水を毎日摂取してもらい1週間後の血液粘調度を調べたところ、血液粘調度に変化がなく有意に排尿回数が増加した 排尿回数が多い患者さんの検尿で 尿比重がほぼ正常で、他の尿定性項目も問題もない ↓ 過活動性膀胱として治療(抗OAB薬処方)開始 OK? 排尿機能低下(神経因性膀胱)や膀胱出口部閉塞(BOO)などで残尿がすでに生じていることあり 機能的畜尿量の低下 残尿測定 膀胱横断像において左右径(X=8.7cm)と前後径(Y=5.0cm)を測定する 次いで上下径(Z=6.5cm)を測定する 残尿量の概算はX×Y×Z/2=141cm2 (残尿 <20ml 20ml<残尿<50ml 残尿≧50ml) 抗コリン薬による残尿増加症例 頻尿の訴えがあり、抗コリン剤処方→症状が改善しないため、薬増量→症状むしろ悪化して、常に尿意を感じる ような状態となり当科紹介 排尿の勢いもおちてきていて、排尿後もすっきりしない感じがあった 排尿直後の膀胱 残尿量大 抗コリン剤を出すときは、排尿にの問診は重要 頻尿の有意な改善がない場合、増量する前に残尿増加の有無を確認を 前立腺肥大症に対する抗コリン剤の不適切使用例 頻尿の訴えに対して抗コリン薬を処方→効果がないため、薬増量し尿失禁が出してきたため当科紹介 大きな前立腺肥大が確認され、ほぼ尿閉の状態で溢流性(いりゅうせい)尿失禁がみられた また両側の高度水腎症もあり、腎機能低下もみられた 肥大した前立腺による膀胱への刺激が単なる過活動性膀胱とされることがある 頻尿は膀胱のさまざまな疾患の一症状にすぎない 頻尿と尿意切迫感ならびに尿流量の低下の症状 過活動性膀胱 α1ブロッカーと抗コリン剤 症状改善× 肉眼的血尿が出現 膀胱超音波検査で膀胱内多発性腫瘍 検尿は重要 抗コリン剤 or アドレナリン受容体作動薬? 私見 抗コリン剤 効果がはっきりしていて、即効性もあり (切迫性尿失禁など深刻なQOL障害がある場合) ただし副作用が比較的多い アドレナリン薬 効果は比較的マイルド 重篤な副作用はほとんどない (前立腺肥大症で容易に残尿が生じる場合) 患者さんから尿が近いとの訴えがあったら ↓ 1回あたりの排尿量の多少を問診 検尿 内科的検索 ← 糖(+)蛋白(+) 膿尿(+) 血尿(+) 抗生剤 ↓ 検尿 改善 効果なし→泌尿器科専門医へ 尿比重<1.010 正常 尿比重≧1.010 多飲多尿 残尿量測定 ↑ (生活指導) 残尿<20ml 20<残尿<50ml 残尿≧50ml 尿意切迫感(+) BOO(+) 抗コリン薬 アドレナリン薬 効果なし 効果あり 効果なし 副作用 症状改善 ↓ ↓ →泌尿器科専門医へ
2019-12-01 19:30:03
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